本「柳家小三治の落語2」
小三治師匠がTBSの「落語研究会」で演じた
名演8席を収録した。
どれもおなじみの噺だが、
出だしが良い。
師匠の口調を想像しながら、
口に出してみる・・・・・・
◇
睨み返し
ええ、すっかりおしつまりましてございいますが、
昔は江戸っ子の言葉に大変気楽な言葉がありまして、
これ、何かってぇと、「どうにかなるよ」てんですね。
「どうにかなるよ、おい」
「どうしたい」
「えぇ、どうにかなんだろう」
「何が」
「いや、何だかわかんねえけど、どうにかなるよ」
なんて。どうにかなっちゃうんだそうですね。
大変いい世の中です。
◇
長者番付
ええ、だんだんとこの、これからは、
休日というものが、ますます多くなるようでございますね。
ま、よろしいんじゃないですかね。
お休みの日になりますってぇと、
みんな競って外国のほうへ出かけるというのが
昨今の風潮のようでございます。
まあ、いいですよ、いま日本は、
一応お金がありますし、
ほんとに豊かじゃないってことはみんなわかってるわけで、
何となく、いくらか金持たされて、
あやされているわけですから、えぇ。
◇
粗忽の釘
ええ、このそそっかしいというのは二通りあるって言いますね。
何かってぇと、一つはまめでそそっかしい。
もう一つはてぇと、不精でそそっかしい。
まめでそそっかしいてぇのは、
どういうのかてぇますと、
何か一つのことを口に出そうと思ってもまめですからね、
あれこれ、あれこれと思い浮かんだものを口に出しまして、
なかなかそのものにつきあたらないという・・・。
◇
子別れ・上
ええ、昔の川柳に「弔いが山谷と聞いて親父行き」
というのがありますね。
そのころのお弔いっていうのは、いまと大分違いまして、
いったんお弔いのお宅へ集まって、
それからお寺まで、ぞろぞろ、
ぞろぞろ歩いていきます。
近きゃいいんですが、
一時間かかっても、
二時間かかっても歩いてく。
◇
子別れ・中
「朝帰りだんだん家が近くなり」というのがあります。
「朝帰りだんだん家が近くなり」
ま、一度でも朝帰りをなすったご経験のある方は、
身にしみる句でございますね、
「朝帰りだんだん家が近くなり」。
恐ろしい句でございます。
◇
子別れ・下
「親方いるかい。親方、いるかね」
「へい。どちらさんで。おぅお、何ですね。
えぇ、どなたかと思ったら、お店(たな)の番頭さんじゃありませんか。
ええ、もしご用があるんだったら、
わざわざじかにおいでにならねえでも、
小僧さんでも使いによこしてくれりゃ、
すぐうかがったんですが。何かご用」
◇
お化け長屋
えぇ、よく他人(ひと)様から、
「のんきな商売でいいねえ」
てなことを言われますが、どうでしょう、
そう見えるんでしょうか。
中には見える人もいるし、
見えない人もいるでしょうし、
えぇ、あたくしなんざ、ほんと困るのはね、
仲間うちから言われるってことがあって、
困るんですよ。
志ん朝さんなんてぇ人は、よくいいますよ。
「おれはね、もう。かぁぁあってんで、
こう段取りを決めて、もう一言も間違えないように、
ずぁあああってんでやんなくちゃいけないのに、
いいねぇ、そっちはのんきで」
そう見えるんですかね、うぅん。
なかなか人の苦労はわかっていただけないようです。
◇
薮入り
えぇ、昔は小学校を出ますってえと、
どんな子でもみんな奉公というものに出されたもんでございます。
もちろん、その上の高等小学校だ、やれ中学だ、
またその上、上と、
勉強し続けていく子供もあったわけですが、
いまとはまるっきり違って、
ほんとうに、もう、
小学校から高等小学校に上がるのでさえ、
相当優秀であれば、
というような、そういう世の中でしたね。
(533円+税、2008年2月11日)
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