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2008年3月18日 (火曜日)

本「キューポラのある街」

早船ちよ著、けやき書房

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 「キューポラ」というのは、

 鉄を溶かし鋳物をつくるための溶解炉のことだ。

 物語の舞台となる埼玉県川口市には、

 かつて鋳物の町工場がたくさんあった。

 時は1950年代後半。

 戦後の混乱を何とかしのぎ、

 高度成長時代に向けた助走を始めた、

 そんな時代である。

 今でこそ超高層マンションが林立する川口市だが、

その当時は時代から半歩遅れた下町色の濃い地域だった。

この物語は街に何百人もいたであろう

底辺の職人一家の日常を描いている。

父親辰五郎は「俺あ根っからの炭炊きだ」

という頑固な昔かたぎの職人で、

母親のトミは「とうちやんはちっともアテになりゃしない」と

酒飲みの夫に愚痴をこぼしながらも、

一家の生活をやりくりしている。

中学3年生の長女ジュンは聡明な女の子で、

高校へ進学して良い会社に就職し、

父母に楽をさせたいと思っている。

<ひねくれ者のジロー>とあだ名される弟のタカユキは、

不良気はあるが、

鳩を育てている心優しい小学5年生だ。

物語はジュンの心と体の成長を軸に展開する。

その間、一家の生活に様々な事件――おばの出産、

鳩をめぐる不良とのトラブル、

父親の失業、――が起こるが、

各人各様のやり方で解決する。

特にジュンは進学か就職か悩みに悩むが、

最後に強い決意で進路を選ぶ。

半世紀前、市井の人々の暮らしは、

こんなだったのだ。

生活水準は激変したものの、

姉弟の考え方や行動には、

時代を超えて共感を覚える。

(2100円、2006年3月)

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1962年、日活。  浦山桐郎監督。脚本に今村昌平が参加、撮影は姫田真佐久、音楽は黛敏郎。  吉永小百合、東野英治郎、杉山徳子、浜村純、菅井きん、浜田光夫、北林谷栄、殿山泰司、加藤武、小沢昭一、吉行和子、鈴木光子、市川好郎、そ... [続きを読む]

受信: 2008年4月 5日 (土曜日) 07時36分

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